東海道旅日記 下りの記【08】 10月8日『瀬田大橋』
2021-3-5 UP
日記に出てくる瀬田大橋の擬宝珠にはこんな逸話があります。千利休が昼の茶会の席で、「瀬田の唐橋に付いている擬宝珠のなかに、形の見事なものが2つあるのですが、それを見分けた方はおられますか」と皆に尋ねました。その場にいた織部が、にわかに席を離れるやその後姿がみえなくなったので、皆どうしたのだろうと思っていると、晩になってお戻りになりました。利休が何か御用事あったかと聞くと、「さきほどご指摘の擬宝珠を見分けてみようと瀬田まで行ってまいりました。二つの擬宝珠とは、橋の両端のものではありませんか。」と織部。それを聞いた利休は「いかにも」と答えます。一座にいた人々は、織部の執心の深さに感嘆したそうです。
