東海道旅日記「下りの記」10月15日『三保の松原』

2022-2-11 UP

15日 早朝に出発し、府中を過ぎて清見が関にさしかかる。浪の音は閑で、月は山の端に残り、霧間にうかぶ三保の松原を見れば、広がる松原と海岸の見事なこと。 
(清見が関の関ではないが)心を関とめるものはない。

月はまだ 残るきよみが せきの戸を
 あけてももらん 三保の浦松

次第に夜が明けていく。由比の塩屋を過ぎる。まだ朝早いというのに、汐を汲む海女が所々に出で立っている。袖の濡れるのも厭わずに我先にと汲む様子を見て

かかるこそ うき身のわざと くむ塩に
  ぬるるをいとふ あまのそでかは

と詠む。田子の浦に塩を焼く煙が立っている。

いまさらに われもおもひをするがなる
 しほやく田子の 浦のけしきは