東海道旅日記「下りの記」

2021-3-5 UP

ご機嫌よろしゅうございます。

日記に出てくる瀬田大橋の擬宝珠にはこんな逸話があります。

千利休が昼の茶会の席で、
「瀬田の唐橋に付いている擬宝珠のなかに、
形の見事なものが2つあるのですが、
それを見分けた方はおられますか」
と皆に尋ねました。
その場にいた織部が、にわかに席を離れるや
その後姿がみえなくなったので、皆どうしたのだろう
と思っていると、晩になってお戻りになりました。
利休が何か御用事あったかと聞くと、
「さきほどご指摘の擬宝珠を見分けてみようと
瀬田まで行ってまいりました。二つの擬宝珠とは、
橋の両端のものではありませんか。」
と織部。それを聞いた利休は
「いかにも」と答えます。
一座にいた人々は、織部の執心の深さに感嘆したそうです。