「筒井」

2016-11-6

11月 6日(日)能と茶の湯
「筒井」

ご機嫌よろしゅうございます。

季節は秋から冬へ、寂寥のおもいがつのる頃。
今日はそんな哀切の情を美しく表現した
お能「井筒」のお話をご紹介します。

ある秋の日、諸国を旅する僧が
奈良から初瀬へ行く途中に、
在原業平建立と伝えられる在原寺に立ち寄りました。
僧が在原業平とその妻の冥福を祈っていると、
さみしげな里の女が現れます。
僧の問いに、女は在原業平と紀有常の娘の
恋物語を語ります。

筒井筒井筒にかけしまろがたけ
生けにけらしな妹見ざるまに

比べ来し振り分髪も肩過ぎぬ
君ならずして誰か上ぐべき

その昔井戸のそばで遊び戯れていた
幼馴染の二人が恋をし夫婦になった。
女は自分がその有常の娘であると告げて、
井筒の陰に姿を消します。
夜も更ける頃、僧が仮寝をしていると、
夢の中に井筒の女の霊が現れます。
女の霊は業平の形見の冠装束をを身につけ、
業平を恋い慕いながら舞い、井戸の水に自らの姿を映し、
業平の面影を忍ぶのでした。
やがてしらじらと夜が明け、井筒の女は姿を消し、
僧も夢から覚めるのでした。

業平を想いながら舞い、在りし日を回想する幻想的な能「筒井」。
すすきを付けた井戸の作り物が秋の侘しさを際立たせます。