卯の花腐し(うのはなくたし)

2014-5-14 UP

5月 14日  卯の花腐し(うのはなくたし)

旧暦四月の異名は卯月といいますが
卯は卯の花(うつぎ)のことで
その頃降り続く長雨のことを
「卯の花腐し」といいます。
卯の花を腐らせるような雨という意味からついた名称です。
適度な湿気は花の美しさを引き立てますが
しばらく雨が続くとクタクタになってしまいます。

和歌では万葉集からこの言葉が見られ、
それほど多くはありませんが近世まで
詠まれ続けました。

卯の花を 腐す霖雨(ながめ)の始水(みづはな)に
寄る木屑(こつみ)なす 寄らむ児もがも
『万葉集』(霖雨の晴るる日作る歌一首) 大伴家持

卯(う)の花を腐らせる長雨の流れる水に寄ってくる木屑(きくず)のように、
(私に)寄り付いてくれる娘さんがいたらいいのに。

いとどしく 賤しづの庵の いぶせきに
卯の花くたし 五月雨ぞする
『千載集』(五月雨の歌とてよめる) 藤原基俊

ただでさえ卑しい身分の我が家は鬱陶しいというのに
この季節は卯の花を腐らして五月雨が降りつづき
いっそう気分がふさいでしまうことよ。

五月下旬は天気の悪い日が多く、
曇り空は卯の花曇り、卯月ぐもりともいいます。