遠州流の点法

2015-1-14 UP

1月 14日(水)遠州流の点法

ご機嫌よろしゅうございます。

当時、遠州好みは綺麗さびとも称されるように
茶道具に限らず、建築や庭園、着物の柄など
その洗練された美しさで、当時の美意識の
お手本ともされていましたが、
遠州公のお点法も綺麗さびの一つです。

松屋会記と呼ばれる茶会記の中で
筆者の松屋久重が遠州公の茶会に
招かれた時の記録が残っています。

久重は炭の置き方、道具の様子などから
遠州公の動きまでを細かく描写しています。

その中で茶巾の扱い方を

成程ニキレイニテ
一ネチメワナノ所アキテ
イカニモダテ也

現代語訳
茶巾のさばき方がなるほどと思わせるように
綺麗で、一ねじふくらませて輪にあけたところ
が、いかにも伊達だった。

この綺麗という感覚は、寛永の時代に共通する
美意識でもあり、当時の公家の日記にも
しばしば「きれい」という言葉がみられます。

伊達という言葉も、当時の流行語で、
仙台伊達家の行列からくる言葉ともされますが、
すっくと目立つ姿、精気あふれる
艶やかな美しさを表現します。

江戸時代後期には
「綺麗キッパは遠江」
と歌われたように

遠州公は、この綺麗を好む寛永文化の美意識の
中心的存在であり、そのお点法も
綺麗さびを感じられる伊達で美しいお点法でした。

現在、遠州流茶道門人が稽古するお点法は
その遠州公の時代から形を大きく変えることなく
伝わっている、伊達で綺麗なお点法なのです。

来週からはその遠州流茶道のお点法を一つづつ
紹介してまいります。

天籟(てんらい)

2015-1-12 UP

1月 12日 (月)天籟(てんらい)

ご機嫌よろしゅうございます。

平成27年 遠州茶道宗家 稽古照今 点初め
も今日で3日目。
気落ちも新たに、神楽坂に足を運ばれている
ことと思います。

さて、普段通い慣れた門人の皆様、
この宗家道場内にある扁額「天籟」はどこにかけられているか、
覚えていらっしゃいますか?

玄関を入って履物をしまい、
つくばいで手を清めて、クロークにはいると
大きな鏡の上に、この字がかけられています。
鏡の前で身支度を整える皆様の動作を
この「天籟」の二文字が
見守っています。

「荘子」斉物(せいぶつ)論の一説に
こんな話があります。

古代の学者南郭子綦(なんかくし)は机に身を寄せ掛け、
空をあおいで静かに呼吸を整えていくうちに、全身から
その正気が消え失せ、魂の抜け殻のような姿に変わって
いくようにみえました。
弟子の顔成子游(がんせいしゆう)がそれを見て、驚いて
いると、意識の戻った子綦が、
「よく気がついたな。今私は自分を失っていたのだ。
お前は人籟を知っていても、
地籟を聞いた事は無いだろう。
ましてや天籟を聞くことは出来ないだろう」
と話しました。

これについて子遊が問うと
「大地の吐く息、それを風と呼ぶ…」
と風によって奏でられる大自然の響きを説きます。

「地籟は地上の穴が和して発する音楽、
人籟は人が楽器でかなでる音楽。
ならば天籟はどういうものですか」

と子遊に尋ねられた子綦は
「天籟とは、人籟、地籟を超えた宇宙の音楽
で、地球上の万物があるがままに調和している姿。
自他の区別を超えて空(くう)になりきる時
人間は限りない調和の世界に入ることができる」
と説きました。

珠光の唱えた、我慢我執を捨て去った茶の湯の境地
「天籟」とはこれに通ずる姿に他なりません。

ご先代は、この心を持って茶の湯の稽古に臨んでほしいと
いう願いで、この字を書かれました。

鏡にうつる姿を整え、同時に目には見えない心も整えて
道場に入ってもらいたい
そんな願いが込められています。

平成27年度 遠州茶道宗家 稽古照今

2015-1-9 UP

1月9日 (金)平成27年度 遠州茶道宗家  稽古照今
点初め(たてぞめ)

ご機嫌よろしゅうございます。

いよいよお茶の新年の行事
点初めが始まります。

例年大勢のお客様、門人で賑わうこの点初め
一服の茶と共に、同座する皆様と
その心を通わせる
皆様に新しい年を迎えた喜びを感じていただ
けるよう宗家及び門人一同精一杯のおもてなしで
皆様をお迎えしています。

さて、お家元に点初めに向けて一言頂きました。

「昨年は映画『父は家元』を皮切りに、
茶道テディベアなど、様々な分野との交流を持ち
遠州流茶道の幅を広げてきました。
今年はそれに満足せず、更に新しい事に
挑戦する姿勢を持ちたいと思います。
その心構えを点初めの掛け物で表したいと
思っています。
その一方御題の「本」に基づき、
茶の湯本来の源を探究してゆきたいと思っております。」

点初めにお越しになる皆様
是非お家元のお話に注目して新年初の
お茶をお楽しみ下さい。【

結び柳と水仙

2015-1-7 UP

1yanagi月7日 (水)結び柳と水仙

ご機嫌よろしゅうございます。
お正月の飾りとして入れられる結び柳
宗家では、お家元が水仙とともに
清々しい青竹に生けて合親亭に飾られます。

結び柳は、唐の張喬の詩に

離別河邊綰柳條(河辺に離れて柳条をわかぬ)
千山萬水玉人遙(千山万水玉人遥かなり)

とあり、昔の中国では大陸のため河を利用する
ことが多く、門出の際に送る者と送られる者が、
柳の枝を持ち、柳の枝と枝を結び合わせて
別れるという古い風習がありました。
輪にすることで、再び巡ってもとに帰ることを意味
するなど諸説あります。

この故事から、利休が送別の花として
「鶴一声」と呼ばれる有名な名物花入に
柳を結んで入れたのが茶席で柳を入れた
はじまりではないかと言われています。

お正月の柳はその年の門出を祝う飾りとして、床の隅から
長く垂れていけるものです。

そしてその根占めに入れられる水仙
昔から茶の湯の花として愛されてきた花で、
十一月からから新年にかけて、村田珠光や千利休
細川三斎などの茶人が多くいけており、
遠州公も水仙を特に好んで冬によく用いました。

次々に蕾をつけて花を咲かし、
またその清楚な美しさから
今でも新年に好んでいけられます。

薮入り(やぶいり)

2015-1-5 UP

1月 5日  (月) 薮入り(やぶいり)

ご機嫌よろしゅうございます。

新年も明けて5日目。
そろそろ仕事始めという方も多いかと思います。

その昔、お休みといえばお盆と正月の
1月16日と7月16日の2日だけ。

当時は今のように週末まで頑張れば…
というわけにはいかなかったようです。
この二日を「薮入り」と呼んでいました。
その理由はそれぞれの前日でもある1月15日と
7月15日にあります。

この両日は小正月とお盆と呼ばれる大切な祭日でありました。
そして奉公人や嫁入り先の用事を済ませた翌日は
実家の行事にも参加できるようにお休みが与えられた
といわれています。
仕事を習うために丁稚奉公にでた奉公人が
休みをとって実家に帰ることが出来る時期であり
また嫁に行った女性が実家に帰れる、
数少ない日でもありました。

この「藪入り」の習慣は現在のお盆と正月
の帰省という形で残っています。
今でも喜びが重なった時に、
「盆と正月がいっぺんにきたようだ」というほど、
この二つは日本人にとって貴重な日でした。

1月4日(月)1月のお話

2015-1-4 UP

1月4日(月)1月のお話

ご機嫌よろしゅうございます。

正月三が日も過ぎ、年が改まった
実感と、徐々に通常の生活へと戻って
いく少し残念な気持ちが入り混じります。

さて、一月の異名の一つである「睦月」は、
人がむつびつくからであるとか、
一年の始まりであるから元つ月(もとつつき)である
などと言われています。
本来、正月もお盆もご先祖様の供養が
目的にあります。そのためお正月に
お墓参りに行かれるご家庭も多いと思います。

6日には、二十四節気の「小寒」を迎え、
寒さが最も厳しい時期に入ります。
いわゆる「寒の入り」で、この時期には
各地で寒稽古や寒中水泳などが行われます。

元旦

2015-1-1 UP

1月1日 (木) 元旦

皆様
新年あけましておめでとうございます

本年も遠州流茶道は稽古照今・温故知新の精神で
皆様と共に茶の湯の心を伝えてまいりたいと
思っております。
何卒よろしくお願い致します。

さてこのメールマガジン「綺麗さびの日々」
も二年目を迎えることが出来ました。
日頃のご愛読感謝致します。

本年は配信スタイルを月・水・金曜日に変更し
月曜には、四季を通じた便り
水曜には、遠州流のお点法について
金曜には、遠州ゆかりの地を巡って
というテーマを基本に
お送りさせていただきます。
土日には関連イベントの告知もその都度
お伝えしていく予定です。

遠州流門人の皆様にはもちろんのこと
他流でお茶を楽しまれている方や
お茶に興味のある方にも読んでいけいただける
ようなお話をしていきたいと考えておりますので
どうぞお楽しみに。

さて、今年の干支は乙未です。
羊は群れをなして行動するため、
家族の安泰や平和をもたらす縁起物とされているのだとか
今年一年が皆様にとって平和で穏やかな年と
なりますように。