「東海道旅日記」10月3日 訳文 その二

2020-9-4 UP

自然と足早になってきて草津の里を過ぎ、
矢橋の渡しに到着し、舟に乗る。
折しもこの時は追い風が吹き、大比延を眺めて

 追風に舟はやばせのわたしなれと
   やふれ衣に身はひえの山

と戯言。
語らいながら、思い焦がれてきた唐崎の松、
長柄山の方に目を向けて
 
 からさきの松ときくよりかへりきて 
  むかしながらの山を見るかな

ほどなくして内出の浜に到着。
此処を預かる人とは特に親交があり、
その方の厚いもてなしをうけ、
早くも故郷に戻ったような心地がしてくるようだ。
その夜は秋の千夜を一夜の心地で、寝もせずに夜を語り明かす。