薩摩肩衝茶入 銘「忠度(ただのり)」 中興名物
2015-3-23 UP
行き暮れて木の下陰を宿とせば
花や今宵の主ならまし
中興名物の茶入に薩摩肩衝 「忠度」という銘のものがあります。「忠度」は世阿弥が新作の手本として挙げた能の一つです。平清盛の末弟であった忠度ある日須磨の山里で旅の僧がその木に手向けをする老人と出会います。一夜の宿を乞う僧に、老人はこの花の下ほどの宿があろうかと勧めます。この桜の木は、一の谷の合戦で討ち死にした忠度を弔うために植えられた木でした。そしてその旅の僧の夢に「忠度」が現れ「行き暮れて」の歌を、「千載集」に詠人不知(よみびとしらず)とされた心残りを語るのでした。風流にして剛勇であった忠度のいくさ語りと須磨の浦に花を降らせる若木の桜が美的に調和した名曲です。この忠度が薩摩守だったことから細川三斎が命銘したとされていて、箱書も三斎の筆と言われています。
