遠州好み「前押せ」
2014-4-25 UP
遠州好みの形である前押は、茶碗や水指などの道具に見られる意匠です。正面に手で押したわずかなへこみを作りアクセントとしています。ここが正面ですよとお客様にわかっていただけるようにとの心配りからついています。
遠州流では濃茶の後、数名のお客様に次々と薄茶を点てる場合に重ね茶碗というものを使用します。同じ出生(窯)のもので、天目型の成りに正面をわずかにへこませた前押の形のものを大小重ねて使用する茶碗です。
遠州公は当初三島茶碗などの平茶碗をお客様の人数分重ねて点法したようですが、それを国焼きに改めて考案しました。切形(きりがた)と呼ばれる型紙をもとに遠州公の作為による前押茶碗を、八世宗中公が作らせた高取の重ね茶碗も今に伝わっています。この重茶碗というお点法は、遠州流特有のお点法です。
