南禅寺大方丈 虎の児渡しの庭

2015-9-4 UP

各地の寺社などでは、その庭を「遠州作と伝えられています」と解説されていることが多く見受けられます。その全ての真偽は定かではありませんが、それだけ遠州公の当時の影響が強かったことがわかります。そのような「伝遠州作」の庭の中で、この南禅寺は、残された文献等から遠州公作と確認できる数少ない作品の一つです。借景、遠近法、大刈込といった、三次元的な技法を駆使し、別名「虎の子渡し」と呼ばれ、左端の大きな親虎とその横の小さな虎の子とが瀬を渡る様子を表すといわれています。
中国の説話では、虎の児は三頭いれば、一頭は獰猛で、他の児虎を食べてしまうそうです。そのため母虎は川を渡るとき、まず獰猛な児虎を最初に向こう岸に渡して引き返し、次の一頭を連れて渡ります。そしてまた獰猛な児虎を連れて戻り、三頭目の虎を連れてまた川を渡ります。そしてまた引き返して、最後に獰猛な児虎を再び連れて渡るのだそうです。母虎の子を児を想う気持ちが表れた優しく雅雅な印象の庭園です。