東海道旅日記 下りの記【13】 10月10日 『その手は桑名の…』

2021-7-16 UP

三重県桑名といえば、蛤の名産地です。揖斐(いび)川、長良川、木曽川が伊勢湾に流れ込み、川の水と伊勢湾の水が混じり合って栄養豊富な水域となるため、濃厚な旨味を持つ美味しい蛤が育ちます。かつては殻付きの枯れた松葉や松笠を燃やしながら、蛤を焼いたようです。この焼き蛤は名物として、伊勢参りに訪れた人々から全国にその名が知れ渡ったと言われています。この桑名の地名と蛤を合わせて「その手は桑名の焼き蛤」という洒落言葉が、江戸時代にはすでに使われていました。やじさんきたさんの珍道中『東海道中膝栗毛』のなかでも、二人が桑名でこの焼き蛤を肴に酒を楽しんでいる様子が描かれています。ちなみに、蛤の旬は春先のようですが、桑名のはまぐりの旬は初夏から夏場の8月頃にかけて、美味しい時期です。