茶の湯日記

不傳庵 茶の湯日記 

「点初めをおえて」

遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 

 本年の宗家研修道場で催された点初めは、6日間、天候に恵まれ、盛況のうちに幕を閉じた。毎日180名ほどの参会客に対し、私と家族・宗家一門をはじめ、水屋、点心、玄関、クローク、庭園など、それぞれの担当を合わせると60名余りが、お迎えすることになっている。単純計算でいくと、なぜそこまでスタッフの人数が必要かといわれるむきもあるが、おもてなしとはそういうものなのである。

 遠州宗家の場合は、ただ単純に人が多いというわけでもなく、全員が志をもってお客さまをお迎えしているので、お出でいただいたみなさまにも喜ばれている。

 私はむろん、向栄亭で濃茶を点てることが主ではあるが、当然のことながら水屋の雰囲気、点心の空気感、薄茶の様子なども気にかけている。大勢なので、すべてが完ぺきとはいえないし、ときには不備があることもある。しかし、気概だけは誰にも負けないという思いは、全員に共通しているものである。これは主催をしている私にとっては、本当にうれしいことでもあり、また誇りでもある。

 私の若い時代には、まだまだそこまでの完成度はなかったと思う。もっとのんびりしていたともいえる。ただそれが、ゆったりとしているというような評価になっていたことも、私は十分理解している。

 が、現代社会のなかでは、限られた時間で、いかに日常の煩忙を忘れ、時を止めて茶の湯一服を楽しんでいただくか、そのためにこちら側の覚悟はむかしよりはかなり必要なのである。

 そういうことをスタッフ一同に伝え、理解してもらうということが私の仕事でもある。お客さまだけでなく、自分自身や身近な人たちにも目を向け、心を配ることの大切さを、点初めは教えてくれるのである。

 一年の初めでもある一大行事は、自分の学びの場でもある。加えて今年はドキュメンタリーテレビ番組の撮影も入り、いろいろな場面にカメラクルーがいて、その意味でもたいへんであった。

 これもぜひ楽しみに、点初めのふだん見られない場面を期待していただきたいと思う。