東海道旅日記
酉 9月
22日天快晴 午時許にむさしの江戸を立したしき人々のここかしこ
馬の餞すとて 申時許 科河(しながわ)の里をいでて
いそぎけれども 酉時許に神奈河里に着
此所に一宿 宵燭ほどに又ともだちの名残
おしみて馬の餞すとて 酒肴 小壺に茶を入 文添てをこせたり
その返事 その返事 取集たる言種いひやる次に

別といふ心を
かへりこむと ちぎるもあだしひとごころ
さだめなき世の 定めなき身に
…
小堀宗慶著「小堀遠州 東海道旅日記 上り」
編集小堀遠州顕彰会 にっかん書房