瀬戸茶入 飛鳥川手
この茶入は、中興名物「飛鳥川」茶入を本歌とする本歌取りの茶入です。本歌取りは、古くから尊ばれてきた和歌(本歌)の語句・構成・趣向を、直接引用せずに巧みに取り入れ、新たな詩情や意味を生み出す技法です。たとえば『古今集』や『新古今集』などの名歌の一節や語をわずかに変えて詠むことで、過去の名歌の世界を背景として呼び起こしながら、新しい表現へと昇華させます。中興名物「飛鳥川」茶入の形姿・土味・釉調など共通する系統・特徴をもつ「本歌取り」の茶入といえます。本歌取りによって生まれた茶道具は、本歌の名を冠して「〇〇手」と呼ばれ、その系統を引き継ぐ作品として珍重されました。この茶入も、中興名物「飛鳥川」の美意識を踏まえた茶入として高く評価されています。
小堀遠州が本歌の「飛鳥川」茶入と初めて出会ったのは堺でのことでした。若き日の遠州に新鮮な印象を与えたこの茶入は、年月を経て伏見で再び対面した際には古色を帯び、時の流れを映す風格を備えていたといいます。その印象から、遠州は古今集の「昨日といひ今日と暮してあすか川流れて早き月日なり」の歌意にちなみ「飛鳥川」と命銘しました。