玉柏(たまがしわ)

2014-6-23 UP

6月 23日 玉柏(たまがしわ)

雨中木繁といふ心を

玉柏しげりにけりな五月雨に葉守の神のしめはふるまで

新古今和歌集

みごとな柏の木は、降りつづく梅雨に、
繁りに繁ったものだ。葉を守る神が、
結界を張ったかのように見えるまで。

「玉」は美称で、玉柏は立派な柏の木という意味
葉守(はもり)の神は柏の木に宿るとされています。

そんな柏の木に宿った葉守りの神が
まるで、柏を包み込んで守っているかのように
しとしとと降る雨で一層青さを増している
様子が思い浮かびます。

遠州公の愛した茶入「玉柏」

2014-5-24 UP

5月 24日 遠州公の愛した茶入
「玉柏(たまがしわ)」

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は遠州蔵帳所載の茶入
「玉柏(たまかしわ)」を
ご紹介します。

「玉柏」は
奈良屋弥兵衛が、摂津国の難波の浦で
見出したことから、遠州公が千載和歌集の恋歌
ちなんで命銘されました。

難波江の藻にうづもるる玉柏
あらわれてだに人をこはばや

難波江の藻に埋もれている石が水面にあらわれるように、
せめて思いをあらわして人を恋いたいなあ。

玉がしわは玉堅磐、海中の岩のことで
井伊直弼の『閑窓茶話』には「玉柏といふ茶入は、
黒きなだれの薬どまりに大なる石はぜあり、
因て遠州玉柏と名づけらる、玉柏は石の異名なり」とあります。

遠州公の茶会では
寛永十九年(1642)を最初に三回ほど使用されています