心あてに折らばや折らむ 初霜のおきまどはせる白菊の花

2014-11-17 UP

11月 17日

心あてに折らばや折らむ
初霜のおきまどはせる白菊の花

古今集  大河内躬恒

ご機嫌よろしゅうございます。
東北から関東にかけては既に初霜の降りた地域も
あるのではと思います。

先ほどの和歌は百人一首にも選ばれている
大河内躬恒の歌です。

当て推量に折るならば折ろうか。
初霜が置いて、その白さのために見分けもつかなく
なっている白菊の花を。

初霜に紛れるばかりの白菊の美しさを詠んでいます。

先人は、寒暖の差によって熟し方の異なる茶の扱いや
炉・風炉の区切りを自然現象によって判断していました。

口切も行う日が予め決められたものではなく
霜が降ってからが良いとされていたのです。

木々が赤く染まり始める頃、
そしてはらはらと散り始める頃

その時々の自然の変化に応じて、
茶の湯も時が流れていきます。

今来むと…

2014-9-22 UP

9月22日 今来むと…

今来むと言ひしばかりに長月の
有明(ありあけ)の月を待ち出(い)でつるかな

ご機嫌よろしゅうございます。
秋のお彼岸となり、暑い夏も
ようやく終わりが見えてくる頃でしょうか。
普段は慌ただしい毎日ですが
月を眺めてゆっくり過ごす心のゆとりも
忘れたくないですね。

冒頭の歌は「古今集」所載・素性法師の恋歌です。

「今すぐに参ります」とあなたが言ったから、
9月の夜長をひたすら眠らずに待っていると
有明の月が出てきてしまいました。

有明の月は夜明けに現れる月
長い秋の夜の明け方、空が白々と

けるまで待っていたのに あの人は現れなかった…と少々さみしげな歌ですが

LINEやメールで瞬時に返信が返ってくる現代では
考えられないおだやかな時の流れと
その間に膨らむ期待と不安が
とても新鮮に、映ります。