11月 4日 (水)遠州流茶道の点法

2015-11-4 UP

11月 4日 (水)遠州流茶道の点法
「茶壺について」

ご機嫌よろしゅうございます。

11月を迎え、茶壺に入った抹茶を取り出す
口切の季節となりました。
通常のお点法から少し離れて、
今日はこの口切で使用する茶壺についての
お話をしたいと思います。

口切の茶事で、躙り口に茶壺が置かれた場合、
その茶壺を床の間に持って行って飾っておきます。
そしてお茶壺拝見となった際には水屋で茶壺に
掛けられた紐を外し、茶壺だけを持っていって
皆さんにまわします。
この際、お客は手の熱が中に伝わらないよう、
掌を茶壺につけないように、指を広げて持つ
ようにします。
また遠州流茶道では、お客様の前で茶壺の封は
開けないということは昨年お話しました。

茶壺は古くから茶道具の第一として大変重要視され
ましたが、徐々に茶入にその座を奪われていきます。
壺飾りをしたのも利休の頃くらいまでで、
遠州公も初めの口切の時だけ壺を飾ったようで、
その他に壺に触れる茶会記は見つかりません。

また本来茶壺は、茶葉を保存しておくために
使用されるものなので、壺の中に空気が通る
ように釉薬がかかっていないものを使用します。
そのため呂宋、信楽、丹波などのようなものが使われ、
仁清などのように釉薬がかかり絵付けされたものは
飾りとしての茶壺ということになります

11月 2日(月)口切の文

2015-11-2 UP

11月 2日(月)口切の文

ご機嫌よろしゅうございます。

11月に入り、炉を開く季節になりました。
また茶壺の封を切る口切の季節でもあります。

古くは霜が降りてから、落葉樹の葉の色づき加減を
みるなどして炉を開くなど、その時々の四季の
変化に応じて茶の湯も行われていました。

古田織部も自邸の柏の木の葉が色づくころ
炉を開いたと言われています。
遠州公もまた同じく、自然の変化に応じて
いたようで、こんな文が残っています。

壺の口切めでたく存候
茶すぐれ申候  竹の花入出来候而
気相もよく候之由様可為本望
委曲久左衛門可申候                        恐惶

九月二十五日              遠州花押

くれ竹のま垣の秋の色に香に
はやここちよしちよの白菊

9月25日付の文には、既に口切を済ませ、
お茶の具合もよく、また自作の花入も満足な
ものができたと喜んでいます。
9月には既に寒さが早くやってきたのでしょう。
先人の茶の湯は現在のそれとは異なり、
自然とともに流れ、変化に応じていく
ゆるやかで豊かな心が感じられます。

八十八夜

2014-5-2 UP

5月2日 八十八夜

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は八十八夜です。

「夏も近づく八十八夜…」で始まる歌が頭に浮かびます。
八十八夜は立春から数えて八十八日目の日をさします。
八十八という字を組み合わせると「米」という字になる
ことから、農家では大切な日とされてきました。
この日を境に本格的な農事にとりかかります。

お茶どころでは茶摘みの最盛期となります。

お茶の葉は、一度でも霜に当たると駄目になってしまいます。
そのため昔は藁をひき、霜を防いだようです。

この八十八夜に摘まれ、
茶壺に詰められた碾茶を、十一月に取り出すのが
「口切(くちきり)」です。

この茶葉を詰めた茶壺は、茶道創生期においては、
茶道具の第一の道具でした。
今では想像しにくいことですが、茶入が茶壺に変わり人気があがるのは、
それよりも後のことになります。