「東海道旅日記」10月2日 訳文続き

2020-7-15 UP

更に進んでいくと、亀山というところに到着した。
山のある方を見ると、時雨が降っているように見えた。
名にしあふ 都のにしの かめ山の
  山にもけふや 時雨ふるらし
ほどなく関の地蔵に着いた。この関では昔から、
顔を白く化粧し地蔵顔した遊女達が
錫杖ではなく、杓子を手ごとに打ち振って
「旅人のかた泊まっておいきなさい。
     お疲れをとっていかれなされ。
じきに日も暮れます。これより先にはお宿はございません。
通しませんよ。」
などという声があちらこちらに聞こえてくる。

あづさ弓 はるばるきぬる 旅人を
  爰(ここ)にてせきの 地蔵がほする

私には罪とがもない。頼みにするまい。
教化別伝。南無阿弥の塩辛を腹が膨れるほど食べたので
杓子ですくわずとも。
などと言って更に馬を早めて
坂の下の里に到着し、一泊。