4月 7日(金)茶の湯にみられる文様 「隅田川」

2017-4-7 UP

春のうららの隅田川 上り下りの舟人が
枴の雫も花と散る 眺めを何にたとふべき

明治時代滝廉太郎の作曲した「花」には穏やかな春の風景がうたわれています。

しかしこの隅田川、「伊勢物語」では旅を続ける男が

名にし負はば いざ事問はむ都鳥
わが思ふ人はありやなしやと

と歌を詠んで涙を流し、梅若伝説をもとにできた狂女能「隅田川」では
人買いに我が子をさらわれ狂女となった女の悲劇が謡われ、物寂しさが感じられます。

さて「形物香合相撲」番付西方四段目には、染付「隅田川香合」があります。
蓋には対角線上に、川に架かる橋を表わしたハジキ(弦状の摘み)がつけられ、
四方の形に柳と屋台舟が描かれており、
屋形舟は隅田川と結びつく約束となります。
東京国立博物館所蔵「蔦細道蒔絵文台硯箱」には文台・硯箱ともに
『伊勢物語』第九段「宇津の山」を意匠化し、蓋の表裏には蔦細道の場面を、
硯箱の身の見込には流水と都鳥により隅田川の場面を表しています。