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茶の湯日記
はじまり
平成十六年甲申歳の年頭にあたり謹しみて新年のお慶びを申し上げます。
本年も、「茶の湯を通して心を豊かにする」この思いを大切に一年を大過なく皆様
と共に歩んでゆきたいと考えている。私自身にとっては、申年ということで当たり年
でもあるので、特にその意を強く持っている。
猿といえば、故事ことわざで第一に思い浮ぶのが「三猿の訓え」である。いわゆる
「見猿、聞か猿、言わ猿」と言われているもので、絵や彫刻などに両目・両耳・口を
両手でふさいだ三匹の猿の姿がユニークに描かれている。茶道具の一つである蓋置に
もそれを象っているものが見られる。
実際に猿がこのような動作をするか否か、動物園に行ってよく観察しないと解らな
いが、私たち人間の間では一つの処世訓として実に意義の深いものである。
自分の都合の悪い事にこの訓えを使用すると、無責任きわまりない人間になってし
まうが、第三者に対しては時としては大切な意味を持つ事になる。つまり他人の欠点
やあやまちに対しては、「見ない、聞かない、言わないようであれ」ということで、
つまり大きな寛容なる心を持つべきである、と解釈してゆけばよいと思う。ちなみに
言わざると見ざる聞かざるよりもなほ
思はざるこそ保ち難けれ
という歌があり、これはなお、意味深長である。
さて干支の方の甲申(きのえさる)も私たちに大切なものを示してくれている。
「甲」は、ものごとの「始まり」「第一番」を意味し、また「最も優れたもの」とい
う意味を持っている。私より先輩の方たちのものの数え方や、成績などにこれが用い
られていた事が記憶にある人も少なくないと思われる。もともと種子や果実の外皮が
割れ裂けた形からできた文字でもあり、殻が割れて発芽することに通じてくる。
「申」は、「伸びる」「伸ばす」であり、さらには「重ねる」「繰り返す」また
「述べる」「申す」や「明らか」といった意味を持っている。「シン」という音には、
「まっすぐに伸びる」という意味と関係があるとも言われている。
これらの意味合いを人それぞれでよく咀嚼していただければと思う。
従って、私にとっての今年は、基本というものを繰り返し学びながらも、旧来の事
のみにとらわれず、新しい芽をまっすぐに伸ばす一年にしてゆきたいと考えている。
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