にぎわい草
柳行李
紅心 小堀 宗慶
三月は、新入学や転勤などで、比較的引っ越しの多い月で、その荷物の中に昔は、
細引の掛かった行李を、見かけたものであるが、最近は行李そのものが、ほとんど使
われていないようである。
「行李」は、もともと行吏と同じで?行きおさめる?義であり、使いの者のことをい
い、そこから、旅に携帯する荷物のことになり、更に、その荷物を入れる物?入れ物?、
今でいう旅行鞄をもいうようになり、入れ物としての機能が勝れるところから、衣服
類などを入れる、収納具にもなった、といわれている。
行李は、柳や竹などで編んで、葛籠のような形に作られたもので、被蓋が特徴で、
しなやかな素材をより堅牢にしている。
柳行李は?こりやなぎ?の二メートルぐらいの枝を切り集め、皮をむいて乾燥させ、
麻糸で編んで作るもので、肌合いが滑らかで、白く艶やかで、やや控え目な光沢が、
衣料などを入れる物として、清潔感もあって、好ましい。この素材としての?こりや
なぎ?は、しなやかで弾力性に富み、しかも軽いことがなにより、持ち運びに適して
いるわけで、通気性のよいことも、日本の風土に合っている。まさに?こりやなぎ?は、
行李のための?やなぎ?であるといえ、そこからこの日本名が生まれた、ということで
ある。
普通"柳行李"と書かれるが、"やなぎ"には二つの性があり、枝が垂れるのと、枝を
上向きに伸ばす類があり、枝垂るのが「柳」、上を向くのは「楊」とする。行李に用
いられる"こりやなぎ"は、水辺に多く自生していることからの"かわやなぎ"の仲間で、
枝を高く伸ばすので"行李楊"とするのが本来であるが、「楊・柳」はどちらも"やな
ぎ"の総称として、使われているのである。
行李は、竹で編んでも作られている。"こりやなぎ"よりむしろ、竹は入手しやすい
材料でもあり、形を作るにも、四隅などの処置はしやすく、"こりやなぎ"よりも頑丈
である。そのかわりに重く、柔軟性にも少々劣り、柳行李の方が上手とされてきてい
る。しかし縁は柳行李でも、皮を剥した割竹を、赤や黒などに染めても用い、柳と竹
の二つの特性をうまく使いこなしている。
行李で今でも人気があるのが弁当箱で、民芸品の店やデパートの特産品売場などで
見かける。小物入れとしても重宝するものだが、特に日本の夏には、弁当を入れる?
入れ物?として、用に合った、本領を発揮させるのである。
行李は、日本の気候・風土からの住居や衣服類などに最も適した?入れ物?の一つで
あった。それが諸々の変わり様によって、今はほとんど使われなくなったことは、し
かたがないとは思われるが、?ぬくもりのある??先人の知恵?の産物として、大小は問
わず、一つぐらいは身近にして、行李から発想を広げて、現在の生活習慣などを、見
直してみるのも、あながち無駄ではないであろう。

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