にぎわい草
片月見
紅心 小堀 宗慶
陰暦では、各月の異称がいろいろあるが、各季節を三つに分け、その季名に?初・中・晩?を冠しての呼称がある。陰暦八月の異称を「中秋」とする。七月の初秋、九
月の晩秋に対する言い方であり、特に八月十五日の称で、「八月節」「中秋節」ともいう。秋の最中ゆえの命名である。その夜の月影は「中秋の名月」と言われていて、今年は九月二十二日になり、翌日は秋分である。名月を愛でる行事、それに伴う風習は、風土に合った地方色があり、独自の?ならわし?ともなって伝えられ、行われている。
お月見には、月見団子を供え、穂の出た尾花を飾る。中秋の名月は、芋を供えるところから「芋名月」の名があり、この頃、里芋が収穫される。旬の里の恵みであり、この茎を?芋茎?という、これも秋を実感させる畑の味覚であり、この芋茎を乾かしたものを?いもがら?と称し、保存食で、水で"もどし"て煮物などにするが、芋茎もいもがらも、日常の食卓にはほとんど、のらなくなった。
名月に供えた月見団子は、盗まれる方がよいとか、この夜に限っては、どこの畑の芋を取っても咎められない、などという所もあり、すすきの穂を黒焼にしてまぜた"
尾花粥"を食べたり、この日から"夜なべ"をするなど、土地によっての"ならわし"がある。
中秋の名月を「十五夜」というのに対して、陰暦の九月十三日の月を「十三夜」と称し、「後名月」や「豆名月」「栗名月」などといういい方もある。豆名月・栗名月はやはり、この時季に採れた、野山の幸の供え物からの名称で、豆はいわゆる枝豆のことである。枝豆の名のおこりは、江戸の湯出菽賣は、豆の枝を取去ることなしに、「枝豆ヤ枝豆ヤ」と言って売ったからとする。
名月にたいする呼び方はかなりあり、十五夜には、その日のことから「三五夜」、「最中月」、まん丸い月という「端正月」「望月」や「名高月」「今日月」「今宵月」などが、十三夜には、「後名月」「後月」「名残月」などの別名が、各々の状態をよく表現している。
「名月」は「明月」とも書かれることがある。十五夜の別名でもある「良夜」「良宵」の意味する?月のよい夜?からの転用であるが、「名月」以外でも"明るい月"を表わす語として使われている。しかし「名月」だけは八月十五日の月と九月十三日の月のみに使う。
今年の後名月は十月二十日になり、秋の土用の始まりの日でもあるが、昔から十五夜と十三夜は必ず、お供えをして、お月見をすることであり、どちらか一方の月見をしないと、「片月見」といって、忌むべきことである。十五夜のお月見をしたら、十三夜のお月見も必ずする、ということである。十五夜は気にかけているが、十三夜はうっかり忘れてしまう、ということがないようにと、注意している。昔の人が、中秋の名月と後の名月は、離してはいけない、対の行事として重んじていたことの、証で
もある。

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