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小堀遠州 茶訓




 茶を点するに勤謹和緩と云う習ひ有り。

 大概をいはば,勤は「つとむる」と読て総て茶を点つる人により 時節により所により 事に物々によりて其品替り有り 殊に 茶は 礼の物なる故に点様置合等万事礼を以てす。 
故に茶人茶道習練する事なり 是をしらづんばあるべからず。  されば 功者智仁習つとめて 其旨を知れりとなり。猶,是等の儀は種々伝ある事にて 頓に開悟し難き故能勉めてしれと云ふことなり。 悔怠なる心あれば理を極むること能はず。

 謹は「つつしむ」と云て先づ身の曲尺を定むべし。是の体にて向て用に背か ず 用に向って体に背かずと云ふ習あり。

 さて 客を敬ひおもむる心 又は 諸の器の扱ひ等を謹めとなり。

 総て 茶を点る時は本性専ら謹むべし。是 其深意有る事なり。 又 君の器 親の器の外 貴人高位の器にて点る時は 猶以て 謹み慎むべし。 貴の器なる故愚あるは本意を背く理あるなり。

 和とは『やはらか』と読みて 茶を点つる手法の次第平和にして 其姿幽玄なるを佳なりとす。 然れども余り正体なきは悪しきなり。 利休なんどは正しき内に和らかなるを善とすといへり。和光同塵とも中和とも云へり 是亦勤する 人は至り難し。

 緩とは「ゆるやか」なりと読て思慮する心なり。此道に限らず万事業此心得 なくては不叶事なり。故に一会の時に限らず 兼て心を天地に廻らし性を草木 禽獣にふれ 物の虚実を念ひ尤も数寄に至ては 其始終陰陽花実をゆるやかに 思ひめぐらし 其程宜しくするを寛かとは云なり。総て仁なる者高きも賎きも 此心なきを愚の人といぶなり。歌人茶人は最もゆるやかに万事たしなむべきは 肝要なり。


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