不傳庵 茶の湯日記
春休み
遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実
今年の春は、実に寒暖の差が激しかった。三寒四温と昔から言われているが、今年
に限っては、全くそれとは異なる程の気温差があったと感じられた人達が多いのでは
ないか。
春一番を思わせる強い風が吹いたと思えば、翌日には冬の寒気がぶり返す。体調を
崩された人も結構いたと聞いている。
一年一年私達を取りまく環境は変化している。皆それが、異変と表現するべき変わ
り様なので少々面倒であり、先々も心配である。
常に申し上げているが、これは私達人間が自然を軽んじてきた結果に違いない。大
幅な意識改革と生活の自制をしない限り元に戻る事は無いであろう。
さて少し前の事であるが、三月末に、二泊三日で京都の観光をした。仕事では毎月
の如く訪れている京都ではあるが、観光目的となると随分久し振りである。
何故に観光をしたかといえば、今春、長女が大学を、そして長男が小学校を卒業し
たので、その事を理由にして家族旅行を計画したのであった。この時季は、最近では
春の茶事を行なっていたのであったが、今年は敢えてそれを行なわなかったのである。
京都となると、流祖・小堀遠州の関係した場所が多く、そこを私なりに子供達と一
緒に訪れながら、話をしたいと思ったのであった。
南禅寺金地院の鶴亀庭園は、やはりゆっくりとそこに坐して、しばらくながめてい
ると、今まで以上にその素晴らしさが伝わってきた。
孤篷庵には、お墓参りにうかがうつもりでいたが、卓巖老師のはからいで山雲床・
直入軒・忘筌も全て拝見させて頂いた。子供達にとって素晴らしい記憶となったに違
いない。私としても、いつもの茶会の時に感じる空気とは別のものを感じることがで
きた。
遠州作と言われる建造物にしろ、庭園にしても、いずれの場合も、どこか一カ所を
切り取っても必ず一つの風景として成立する事がすごいと言える。一つひとつの完成
度が非常に高い。だから一部分でも美しいと感じるのである。更にそれら全体を見る
と一段と美しくなる。つまり総合的な完成度も高いと言えるのである。
こういうデザイン性というのは遠州独壇場のものである。私自身も目指してゆきた
いと思っていたものを再発見できたような気がした旅行であった。

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