東海道旅日記 9月24日

2019-8-20 UP

047

24日 
雨降風不止  けふはここにとどまるべきなどいふ 
巳時許りに天晴 風もしづまる 立小田原 
湯本相雲寺を経て あしがらの 山にかかる 
遠近に重る山々 谷々のこずえ 色々に染出す
にしきをさらすかと うたがふ
あまりの面白きに ゆきもやらず とある岩がねに
たすけられて 独見る 山の紅葉といふ心を

思ふかひ なき世なりけり 
あしがらの 山の紅葉も君しなければ

やうやうやまをよぢて 葦河の新宿に着
暫 休息して それより山中の里を過ぎて
夕陽とともに山をくだりて 三嶋の里に着 一宿 
折節思ひ出ることありて うたたねの夢見て

かり枕 かたぶくるより うたたねの
    夢をみしまの ひとのおもかげ

此歌の詞書 思子細有て委(くわしく)かかず